著者:横山晴美
家計情報を分かりやすくお届けするファイナンシャルプランナー
EV(電気自動車)は徐々に普及が進んでいます。環境への優しさや、災害時の非常用電源としての活用といったEVならではのメリットがあり、購入を検討している方も少なくないのではないでしょうか。
EVを検討する際に多くの人が気になるのが、燃料費(電気代)がどうなるかではないでしょうか。
そこで本記事では、EVをお持ちの方へアンケートを実施し、EVによる電気代の影響について調査しました。また、EVの電気代の具体例もお伝えします。
ガソリン代は近年上昇傾向
ここ数年、ガソリン価格は上昇傾向にあります。世界的な原油価格の変動や為替レートの影響により、日本のガソリン価格は大きく変動し、多くの家庭の家計を圧迫しています。ガソリン価格の推移は次の通りです。2020年4月以降、上昇傾向であることが分かります。
【2020年1月以降のレギュラー価格の推移(全国平均)】
このような状況下で、EVへの乗り換えが注目されています。
アンケートで聞いた!EV(電気自動車)を購入した理由
【EV(電気自動車)を購入した理由(複数回答)】
実際に、EV所有者を対象に実施したアンケートでも、購入理由のトップは「経済的メリットがあると考えたから」でした。環境への配慮や先進技術への関心も上位に挙がりましたが、やはり財布に優しいという点が最大の魅力となっているようです。
実態調査!EV(電気自動車)でかかる電気代は?
■EV(電気自動車)は節約を実感している方が多数
EVはバッテリーの充電にかかる費用が発生します。充電ステーションを利用する場合は充電料金がかかりますし、自宅で充電する場合は電気代がかかります。
以前は高額であったEV(電気自動車)ですが、手の届きやすい価格帯の車種も増えてきており、実際にEVを利用している方のアンケートによると、ガソリン車との燃料費の比較において、過半数が「節約できている」と感じているようです。
【EV導入後、ガソリン車と比べ燃料費を節約できているか】
EVでかかる燃料費には、自宅で充電したときの電気代と充電ステーション利用時の充電料金があります。それぞれの利用割合とEVの電気代をアンケートからご紹介します。
■EV(電気自動車)の充電方法
まず、「自宅充電」と「公共充電ステーション」の利用方法の割合は、次の通りです。
【充電方法】
- ・すべて自宅充電 17.1%
- ・充電ステーションと自宅充電を利用 74.5%
- ・すべて充電ステーション 8.4%
両方を利用している層が最多とはいえ、自宅だけで充電している層も2割近いです。一方で、自宅充電を全く利用しない層は全体の1割以下です。割合は幅があるものの、ほとんどの方が自宅充電を利用しているため、自宅充電にかかる電気代は気になるところです。
【EV導入後、自宅充電によるご家庭の電気代は月当たりいくら増えたか】
EV導入後の、月の電気代の変化は「3,000円以上から5,000円未満の増加」と答えた方の割合が「約23%」と最多でした。さらに、「増加していない」という層も「約18%」います。
充電ステーションでかかる充電料金
【充電ステーション利用時の費用】
充電ステーションでかかる充電料金は、1,000円未満と答えた方が「約31.4%」と最多でした。続いて500円未満が「26.9%」、無料が「14.6%」と続きます。「分からない」と答えた方を除くと、ほとんどの回答が1,000円未満でした。
■月当たりいくらかかる?
上記のアンケート結果では次の通りでした。
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最多回数 |
月間の電気代の変化 |
3,000円以上から5,000円未満の増加 |
充電ステーション利用時の費用 |
500円以上1,000円未満
- ※その他サービスによって月額料金が発生する場合があります。
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電気自動車(EV)の充電方法はひとつではないので一概にはいえませんが、最多回答によると、電気自動車(EV)の充電によってかかる出費は、月当たり4,000~6,000円未満と推測できます。
EV(電気自動車)の電気代を計算してみました
自宅充電によってかかる電気代を実際に計算してみていきましょう。
■EV(電気自動車)の電気代【具体例】
自宅充電の電気代は「電気料金単価(※1)×消費電力量(※2)×充電時間」で算出できます。2つの異なるバッテリー容量で、電気代を計算してみます。
- ※1 ご自宅の料金メニューによって電力量料金単価は異なります。ここでは関西電力の「従量電灯A」における第2段階(120kWhをこえ300kWhまで)の電力量料金(1kWh あたり25.61円)の料金単価を使用します。
また当計算例は従量電灯Aにおける電力量料金の料金単価をもとに、従量電灯Aの電力量料金の一部を構成する要素を算定しているものです。そのため、最低料金、燃料費調整額、再生可能エネルギー発電促進賦課金を含みません。
関西電力 「従量電灯A」料金単価
- ※2 200Vの充電用コンセントと仮定し出力「3.0kW」とする。
具体例1 バッテリー容量40kWhの場合
- ・電気料金単価25.61円×3.0kW ×13.3時間=約1,021円
充電時間はバッテリーを0%から満タン(100%)にするケースを想定しています。充電時間は「40kWh ÷3.0kW=約13.3時間」で算出しました。
バッテリー容量40kWhの電気自動車には、例えば日産自動車の「リーフ」があります。
具体例2 バッテリー容量 20kWhの場合
- ・電気料金単価25.61円×3.0kW ×6.6時間=約507円
充電時間はバッテリーを0%から満タン(100%)にするケースを想定しています。充電時間は「20kWh ÷3.0kW=約6.6時間」で算出しました。
バッテリー容量20kWhの電気自動車には、例えば日産自動車の「サクラ」、三菱自動車の「eKクロス」があります。
電気自動車(EV)の電気代を節約するには
電気料金メニューも重要
1kWhあたりの電力量料金単価が低ければ電気代も抑えられます。電力量料金単価は電気料金メニューによって変わるので、お得なメニューを選択することも重要でしょう。
ただ、残念ながら、アンケートではEV充電に向いている電気料金メニューに「加入していない」と答えた方が約41%で最多でした。「分からない」と答えた方の割合も20%以上となっており、電気料金メニューを意識していない層も少なくないようです。
【EV充電に向いている電気料金プランの加入の有無】
充電代(電気代/電力量料金)を抑える電気料金メニューとして、おすすめしたいのが時間帯によって電力料金単価が変わる電気料金メニューです。
例えば、オール電化の方向け※のメニューとして、関西電力の「はぴeタイムR」があります。季節や時間帯によって電力量料金単価が異なるメニューで、午後11時から午前7時までの8時間は電力料金単価がお得なナイトタイムです。電気自動車(EV)の充電だけでなく、洗濯機や食器洗浄機もナイトタイムに使うことで、全体の電気代節約にもつながります。
関西電力「はぴeタイムR」
- ※基本料金2,409.40円/月(10kWまで)10kWを超える1kWにつき、416.94円/月
- ※電気を全く使用されない(使用量が0kWh)の場合の基本料金は半額といたします。
デイタイムはナイトタイムと比べて割高な電気料金単価となっています
- ※低圧で電気の供給を受け、電灯または小型機器を使用し、デイタイムからリビングタイムまたはナイトタイムへの負荷移行が可能で、かつ、総容量が原則として 1kVA 以上の電気式給湯設備等(エコキュートや電気温水器等の夜間蓄熱式機器、多機能型ヒートポンプ給湯機等のオフピーク蓄熱式電気温水器、ハイブリッド給湯機等で、台所や洗面などの浴室を含まない給湯需要の一部をまかなう小型電気温水器等の機器は除きます。)を使用されるお客さま向け。
- ※契約メニューによって燃料費調整単価および原料費調整単価および上限の有無が異なります。実際のメリット額は、電気・ガスのご使用状況のほか、燃料費調整額・原料費調整額および再生可能エネルギー発電促進賦課金により変動し、これらの増額により、電気料金、ガス料金が変更前よりも高くなる可能性もあります。
電気料金・ガス料金の計算方法や燃料費調整額・原料費調整額・再生可能エネルギー促進賦課金の最新単価や過去の推移は、こちらからご確認ください。
オール電化ではない方向けのメニューとしては、「eスマート10」があります。使用される季節や時間帯によって電気料金単価が異なる電気料金メニューです。午後10時~翌日午前8時の時間までの10時間の電力料金単価がお得なナイトタイムです。
eスマート10
- ※基本料金1,302.40円/月(6kWまで)6kWを超える1kWにつき、416.94円/月
- ※電気を全く使用されない(使用量が0kWh)の場合の基本料金は半額といたします
- ※デイタイムはナイトタイムと比べて割高な電気料金単価となっています。
- ※契約メニューによって燃料費調整単価および原料費調整単価および上限の有無が異なります。実際のメリット額は、電気・ガスのご使用状況のほか、燃料費調整額・原料費調整額および再生可能エネルギー発電促進賦課金により変動し、これらの増額により、電気料金、ガス料金が変更前よりも高くなる可能性もあります。
電気料金・ガス料金の計算方法や燃料費調整額・原料費調整額・再生可能エネルギー促進賦課金の最新単価や過去の推移は、こちらからご確認ください。
まとめ
EV(電気自動車)のバッテリーを自宅充電したときの電気代とガソリン車の燃料費を比較すると、お得になるケースが少なくありません。また電気料金メニューを見直すことで、よりコストを抑えられる可能性が高まります。
興味のある方は、この機会に前向きに検討してみてはいかがでしょうか。